#011 高齢化が進む日本! 土地活用に高齢者施設「サ高住」を選択した経緯をご紹介

令和1年着工、令和2年完成「サービス付き高齢者向け住宅」

少し前の事例になりますが、杉並区の某私鉄沿線人気駅から徒歩10分の立地での土地活用のご紹介をします。

一種低層住居専用地域、建蔽・容積率は50%・100%、準防火エリアで地積は1300㎡強あり当時弊社が30数年前に企画設計した木造アパートが2棟建っていました。リフォームも含め主に4パターンで活用プランを検討しました。

㈠ 大規模リフォーム 

建物躯体と現在でも通用する間取を生かし1室当たり230万円で20室、外壁、外構等その他費用も併せると初期投資が7500万円(税込・以下同様)かかります。これは初期投資が抑えられ当面の投下資金効率は相当に優秀ですが土地評価額(路線価は38万円/㎡)に対し借入金の規模が小さく、10年程度の事業継続後に再度検討する必要があって相続対策向きではありませんでした。

㈡ 賃貸マンション

1室40㎡強の居室が29室、RC造で初期投資が六億1500万円かかります。従来通りの賃料水準で考えれば事業年度トータルでの手元のキャッシュは最大になりますが建築単価の高騰で予想以上にコストがかかり資金効率が悪く、事業年数も長くなるので人気エリアといえども今後の需要動向も不安です。木造でも検討しましたが事業計画上の優位性はありませんでした。

㈢ 軽費老人ホームとグループホームの複合施設

38室、延床1100㎡、22年間の一括借上業者がつき初期投資3億3000万円の内1億5000万円の補助金が見込めるのが魅力ですが借上げ賃料の水準に人気エリアの優位性が左程反映されるわけではなく借上期間の税引後累積収支は思ったほどでもありません。また各室に水回りが無い等転用に難があるのも気になりました。

㈣ サービス付き高齢者向け住宅

1室25㎡の居室が22室、デイサービス業者借上げ用に220㎡、その他共用部計延床990㎡で投下資金2億9300万円の内補助金が4900万円見込めました。

築30年のアパートを解体
更地の状態

 最終的に「サービス付き高齢者向け住宅」の案に落ち着きました。決め手は以下のとおりです。

 ① 収支分岐点稼働率が低いこと
 ②  事業期間や借入金額が相応であること
 ③ 今後の高齢者需要に対応できる一方で、各室に水回りがあり万一に備え通常のワンルームの賃貸に転用できること。

 この他にもコンビニの立地に関する規制緩和があったので大手フランチャイザー複数社に検討依頼したのですが適格でないとのことでした。

 今回の検討を経て、昨今の建築単価の高騰が予想以上に事業の成立を困難にしているという事が具体的に理解できました。
 人気エリアで駅から徒歩で10分間の立地でも50%・100%の建蔽・容積率では助成金を利用する等実質的な負担を抑えたり、高収益で稼働する部分を組み合わせていかないと有効活用の事業が成立しづらくなっています。もっとも補助金や優遇税制については年度により変動する可能性があり、本件では平成30年度の国交省及び東京都のサ高住整備事業補助金の制度並びに平成31年3月末までのサ高住住宅供給促進税制(二年毎の延長措置が取られてきた)を適用して収支計算しました。

 このような補助金や税制優遇の動向も予め検討し、今後の国の施策と合致するかは常時配慮していかなければならないでしょう。

 

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