#014 『標準地最高価格 4,840,000円/㎡(東京都内住宅地)』の土地探訪!

 国土交通省が作成した標準地・基準地検索システムというサイトがあります。
第2回目は住宅地で最高価格4,840,000/㎡となった港区赤坂1-14-11です。

前回も書きましたが、初めての方のために、「標準地」、「基準地」を簡単に説明しておきます。新聞等でご覧になった方もいるかと思いますが、毎年3月下旬と9月下旬に地価調査の結果が発表されます。

3月下旬の発表が国土交通省地価公示で調査対象となる土地を「標準地」と言っています。価格を判定するのは1月1日時点です。

これに対し9月下旬が都道府県地価調査で調査対象となる土地を「基準地」と言っています。こちらは価格を判定するのが7月1日時点です。「標準地」や「基準地」のことを通称で「ポイント」と言ったりします。標準地・基準地の中には重複するポイントもあります。
特に「標準地」については不動産鑑定士が価格を算定する上で作成した鑑定評価書をサイトで見ることができます。鑑定評価書にはポイントが所在する地域(近隣地域)の価格を形成する地域要因の将来予測や市場の特性などの記載があります。

 標準地の場合は二人の不動産鑑定士が評価することになっているので2通の鑑定評価書があり比べてみると一層興味を持って現地を見ることができます。(基準地は一人の不動産鑑定士が評価)

 

最寄駅及び近辺のエリア

 最寄駅は東京メトロの溜池山王です。この駅には銀座線、南北線が乗り入れ、さらに丸の内線、千代田線が乗り入れる国会議事堂前駅とは改札内で連絡しています。四ツ谷からの南北線延伸に伴って1997年に開設された比較的新しい駅です。駅の出口は1~14までありますが1~5は国会議事堂前駅側の出口で、6~14が溜池山王駅側の出口となっています。

最寄り駅の「溜池山王」

ポイントの最寄りの出口は13です。地下鉄の駅にはよくあることですが出口13まで一番近い銀座線でも降車後5~6分は地下を歩くことになります。

 駅名は赤坂界隈の低い所と高い所をくっつけた「溜池山王」という名前ですがポイントは13番出口から420mで桜坂、鼓坂と昇りが続き、高台にあがった感じがします。

桜坂

ポイントから銀座線ホームまではトータルで11~12分はかかります。 このエリアは住居表示は赤坂でも六本木通りの南東側にあり、赤坂見附駅の南西側に接する商店・飲食街や中規模マンション、ホテルに料亭が点在という赤坂界隈とは随分と違う雰囲気です。

 ポイントの有るエリアの北の街区にはアメリカ大使公邸、はす向かいの北東の街区はホテルオークラ、東はホテルオークラ別館(解体工事中)、南はスペイン大使館やスェーデン大使館、西はアークタワーと書けばイメージできるかと思います。いわば生活臭のないエリアでそんなところにマンションがと思われるかもしれませんが鑑定評価書にはポイントがある近隣地域はポイントから北30m、南110m、西25m、その地域の標準的使用は高層共同住宅と記載されています。

オークラ 集古館

近隣地域というのは不動産鑑定評価上の用語で用途的観点から区分される地域です。不動産鑑定評価基準によれば「対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容を持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。」と定義されています。

「標準地」の現況

標準地の地積は1,053㎡で現況は地上10階地下1階のRC(鉄筋コンクリート造)の共同住宅の敷地となっています。前面道路の幅員は8.5m、南東側で接道しています。第2種住居地域で建蔽率60%、容積率400%です。第2種住居地域というのは住居系の用途地域の一つで 用途地域は都市計画法で定める都市計画区域内の市街化区域には必ず定める必要があります。13の種類があり、どのような用途の建物をどのような規模で建てられるかを規定しています。ご存じの方も多いでしょうが建蔽率は敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合で、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合です。

「標準地」前面道路

今回(令和3年1月1日時点)の公示価格は4,840,000円/㎡です。公示価格の決定は不動産鑑定士の評価額を基にはしていますが土地鑑定委員会が行っています。

今回のポイントは2名の不動産鑑定士の評価額と公示価格は一致しています。今回は標準地が1,000㎡超の都心の住居系の土地であることから2名の不動産鑑定士は開発法という鑑定評価の手法を適用しています。特に1名の不動産鑑定士は「試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由」の欄で「比準価格は、港区の高級住宅地内の実際の取引事例を基礎として試算しているが、分譲マンションに適する画地規模の事例が少なく相対的な説得力はやや劣る。開発法による価格は、最近の分譲価格を基に分譲収入を査定するとともに、開発事業者の実態に即して投下資本収益率を査定しており、事業採算性を直接的に反映して高い説得力を有する。そこで開発法による価格を重視し、比準価格も参酌して、鑑定評価額を上記のとおり決定した。」と記載しています(こちらの不動産鑑定士の開発法による試算価格はズバリ4,840,000円/㎡です)。

 開発法はデベロッパーなど開発業者の事業採算性に着目して土地の価格を試算する鑑定評価の手法で、まさに不動産競争入札に参加してくる事業者が入札価格を決める際の作業と同様の過程を踏まえて価格を算出します。次回は開発法について書いてみたいと思います。

 

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